人材育成に使える助成金!人材開発支援助成金の4コース・申請手順・不支給事例まで徹底解説

人材育成にかかるコストを国が一部補助してくれる「人材育成に使える助成金」を活用すれば、限られた予算でも効果的な研修・訓練が実施できます。
代表的な制度は厚生労働省の「人材開発支援助成金」で、4つのコースから自社の状況に合ったものを選べます。申請期限や手順を誤ると不支給になるリスクもあるため、制度の全体像・各コースの内容・申請ステップ・よくある失敗を正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、2026年度版の人材育成助成金を網羅的に解説します。
人材育成に使える助成金とは|メリットと活用すべき理由

助成金制度をうまく活用することで、人材育成コストを大幅に削減しながら従業員のスキル向上を実現できます。まず基本的な仕組みとメリットを確認しましょう。
助成金は返済不要の公的支援金
助成金とは、国や都道府県が特定の要件を満たした事業主に対して交付する公的支援金で、原則として返済不要です。融資(借入)とは異なり、後から返す必要がないため、受け取った資金をそのまま人材育成に充てることができます。
人材育成関連の助成金は主に雇用保険を財源とする厚生労働省の制度として提供されており、毎年度の要件・助成率・上限額などが改正されます。2026年度も新たな改定が行われているため、最新情報は厚生労働省の公式サイトで確認することをおすすめします。
人材育成に助成金を活用するメリット
助成金を活用する主なメリットは次の3点です。①研修・訓練コストの削減:外部研修費・講師費・教材費などの経費の一部(最大70〜75%)が補助され、コスト負担を大幅に軽減できます。②従業員のモチベーション向上:会社が人材育成に積極投資していることが伝わり、社員の定着率・エンゲージメントが向上します。
③計画的な人材育成の推進:申請のために訓練計画書を作成する過程で、自社の人材育成ビジョンを整理でき、体系的な育成計画の策定につながります。中小企業にとっては特にコスト負担の軽減効果が大きく、積極的に活用することが推奨されます。
中小企業ほど助成率が高い仕組み
人材開発支援助成金の助成率は、中小企業と大企業で異なります。中小企業の方が高い助成率・高い助成額上限が設定されており、少ない自己負担で人材育成を進められます。中小企業の定義は業種により異なりますが、製造業・建設業等は資本金3億円以下または従業員300人以下が目安です。
【最重要】人材開発支援助成金(厚生労働省)の4コース

人材開発支援助成金は厚生労働省が所管する最も代表的な人材育成助成金です。2026年度は主に4つのコースが設けられており、自社の訓練内容・目的に合ったコースを選択します。
| コース名 | 主な対象 | 助成対象 | 中小助成率(目安) |
| ①人材育成支援コース | OJT・Off-JT訓練を実施する事業主 | 訓練経費・訓練中賃金 | 経費70%・賃金960円/時 |
| ②教育訓練休暇等付与コース | 自発的学習に有給休暇を付与する事業主 | 訓練中の賃金相当額の一部 | 賃金の一定額を助成 |
| ③人への投資促進コース | デジタル・AI・成長分野訓練 | 訓練経費・訓練中賃金 | 経費70〜75%・賃金1,000円/時以上 |
| ④事業展開等リスキリング支援コース | 新事業展開に伴う訓練 | 訓練経費・訓練中賃金 | 経費75%・賃金960円/時 |
コース①:人材育成支援コース(OJT・Off-JT訓練への助成)
人材育成支援コースは、人材開発支援助成金の中で最も汎用性が高く利用件数の多い主力コースです。職場内訓練(OJT)と職場外訓練(Off-JT)の両方が助成対象です。
Off-JT(外部研修・社内集合研修等)では訓練経費の70%(中小企業)と、訓練中の賃金として1時間あたり960円(中小企業)が助成されます。OJT(業務の中での実践訓練)では1時間あたり760円(中小企業)が助成されます。
特定訓練(若年者への訓練・建設・製造等への訓練・生産性向上に資する訓練等)に該当すると助成率がさらに高くなります。訓練時間の要件は、Off-JTが20時間以上(訓練内容によって異なる)であること、OJTを組み合わせる場合は一定の比率を保つことが必要です。
「外部の研修会社のセミナーに社員を参加させたい」「社内研修を体系的に実施したい」という場合に特に活用しやすいコースです。
コース②:教育訓練休暇等付与コース(有給休暇中の自発的学習支援)
教育訓練休暇等付与コースは、従業員が自発的に学習・訓練を行うために取得した有給休暇(教育訓練休暇)を付与した事業主に対して助成が行われるコースです。
「従業員が自ら学びたいと思っていても時間が取れない」という課題に対応するために設けられた制度です。従業員が資格取得・スキルアップ・大学院進学などのために教育訓練休暇を取得した場合、その取得した休暇期間中の賃金相当額の一部が助成されます。
自発的学習を制度として支援したい、従業員の主体的なキャリア形成を後押ししたい企業に向いているコースです。休暇制度の整備(就業規則への規定等)が申請の前提条件となります。
コース③:人への投資促進コース(高度デジタル・成長分野・リスキリング)
人への投資促進コースは、デジタル・IT・AI・データサイエンス・DXなどの高度な知識・スキルを習得するための訓練、および成長分野(グリーン・カーボンニュートラル・介護等)への訓練を対象とするコースです。
従来の人材育成支援コースより高い助成率が設定されており、デジタル人材の育成・リスキリングを重点的に支援する趣旨があります。高度デジタル人材訓練(専門実践教育訓練指定講座等)では訓練経費の75%(中小企業)が助成されます。
また「定額制訓練」(サブスクリプション型の研修サービス)の助成も可能な場合があります。ITエンジニアの育成・社員のデジタルリテラシー向上・DX推進に向けたリスキリングを計画している企業には特に活用価値の高いコースです。
社員のリスキリングが注目される現在、このコースを活用してDX人材育成を推進する企業が増えています。申請前に対象となる訓練・講座の要件を厚生労働省の公式サイトで確認することをおすすめします。
コース④:事業展開等リスキリング支援コース(新事業展開に伴う訓練)
事業展開等リスキリング支援コースは、新たな事業展開・業態転換・生産性向上に伴って、既存の労働者に新分野の知識・スキルを習得させる訓練を対象とするコースです。
たとえば製造業がIT分野に新規参入するために既存社員にプログラミングを習得させる場合、不動産業がコンサルティング事業に展開するために社員にコンサルスキルを習得させる場合などが対象になります。訓練経費の75%(中小企業)が助成されます。
申請には「事業展開等計画書」の作成が必要で、新事業の内容と訓練の必要性を説明する書類の準備が求められます。既存事業のみを対象とした訓練は対象外となるため、申請前に要件の確認が必要です。
中小企業・大企業別の助成率・助成額の違い
人材開発支援助成金の主な助成率・助成額の違いを以下の表にまとめます。
| 区分 | 中小企業(目安) | 大企業(目安) |
| 訓練経費(Off-JT) | 70%(特定訓練は75%) | 45%(特定訓練は60%) |
| 訓練中賃金(Off-JT) | 960円/時 | 480円/時 |
| OJT訓練(1時間あたり) | 760円/時 | 380円/時 |
| 人への投資促進コース(訓練経費) | 70〜75%(対象訓練による) | 45〜60%(対象訓練による) |
表の数値は目安であり、訓練の種類・対象者・実施方法によって異なります。最新の詳細は厚生労働省の公式サイトまたは管轄の都道府県労働局にご確認ください。
人材開発支援助成金以外の人材育成関連助成金一覧

人材育成に活用できる助成金は人材開発支援助成金だけではありません。自社の状況や従業員の属性に応じて、以下の制度も組み合わせて検討することをおすすめします。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者(パート・アルバイト・派遣社員・契約社員等)のキャリアアップ・処遇改善を支援する助成金です。正社員転換コース・賃金規定等改定コース・健康診断制度コースなど複数のコースがあります。
非正規から正規雇用への転換に成功した場合は1人あたり数十万円の助成を受けられます。従業員の雇用安定・職場定着・スキルアップを一体的に支援できる制度で、多くの中小企業が活用しています。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者(65歳以上)・障害者・母子家庭の母・ひとり親家庭の父などの就職困難者をハローワーク等の紹介で採用した事業主に対して支給される助成金です。
採用後の賃金の一部が一定期間にわたって助成されます。多様な人材の採用・雇用促進に積極的に取り組む企業にとって、採用コスト・育成コストの削減に活用できます。
東京都スキルアップ助成金
東京都スキルアップ助成金は、東京都が独自に実施している中小企業の人材育成支援制度です。国の助成金との併用が認められない場合もありますが、都内の中小企業では非常に有力な支援制度です。
都が指定した訓練機関・研修コースを受講した場合に訓練経費の一定割合(都によって異なる)が助成されます。都の産業労働局または東京しごとセンターで詳細を確認できます。大阪・神奈川・愛知など他の都道府県にも独自の人材育成助成制度があります。
地方自治体独自の人材育成助成金
都道府県・市区町村が独自に設けている人材育成助成制度も多くあります。国の助成金の要件に当てはまらない訓練でも、地方自治体の制度なら対象になるケースがあります。
自社の所在地の都道府県労働局・産業振興センター・商工会議所に問い合わせることで、地域の助成制度に関する情報を入手できます。国の制度と都道府県の制度を組み合わせて活用することで、自己負担をさらに抑えられる場合があります。
人材育成助成金の申請の流れ(ステップ別)

人材開発支援助成金の申請は「計画書提出→訓練実施→支給申請」の3ステップで進みます。各ステップの手順と注意点を正確に理解しておくことが、確実な受給への近道です。
STEP1:訓練計画書の作成と労働局への提出
最初のステップは「職業訓練実施計画書」の作成と、訓練開始日の原則1ヶ月前(21日前)までに事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に提出することです。
計画書には、訓練の目的・対象者・実施日程・訓練時間・カリキュラム・担当講師・実施場所・訓練経費の見積もりなどを記載します。この計画書の提出が受理されてから訓練を開始することが絶対条件です。計画書の提出前に訓練を開始してしまうと不支給になります。
計画書の記載内容は、後の支給申請時に提出する実績書類と整合している必要があります。不明点は事前に労働局の窓口または社会保険労務士に確認してください。
STEP2:訓練の実施と必要書類の整備
計画書の受理通知(確認通知)を受けたら、計画書通りの内容で訓練を実施します。訓練中は次の書類を必ず整備・保管してください。①訓練受講者の出席簿(出席・欠席の記録)、②訓練の実施記録(カリキュラムの実施内容・講師の記録)、③外部研修の場合は受講証明書または修了証明書、④訓練中の賃金を確認できる賃金台帳・タイムカード等。
これらの書類は支給申請時の証拠書類として提出するため、訓練実施中から適切に保管する仕組みを設けておくことが重要です。また訓練の内容が計画書の記載と大きく異なる場合は変更申請が必要になります。
STEP3:支給申請書の提出
訓練が終了したら、訓練終了日の翌日から起算して2ヶ月以内に支給申請書を管轄の都道府県労働局に提出します。提出書類は「支給申請書」「訓練実績一覧表」「賃金台帳」「出席簿」「訓練経費の領収書」「修了証明書」などです。
支給申請後、審査が行われ問題がなければ指定口座に助成金が振り込まれます。審査から振込まで通常2〜4ヶ月程度かかります。支給申請期限(2ヶ月以内)を1日でも過ぎると不支給になるため、訓練終了後すぐに申請書類の準備を始めることをおすすめします。
申請先:各都道府県の労働局・ハローワーク
人材開発支援助成金の申請先は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))です。東京であれば東京労働局、大阪であれば大阪労働局への提出となります。
一部のコース・手続きはハローワーク経由で行うものもあります。申請先が不明な場合は最寄りのハローワークに問い合わせることで、適切な申請先を案内してもらえます。
社会保険労務士への相談・申請代行の活用
人材開発支援助成金の申請は書類の種類が多く、要件の確認・計画書の作成・支給申請書の記載など手間がかかります。社会保険労務士(社労士)は助成金申請の専門家として代行申請に対応しており、書類作成から申請まで一括してサポートを受けられます。
成功報酬型の社労士事務所も多く、「受給できた場合にのみ報酬を支払う」という契約形態が一般的です。初めて申請する場合や複数コースの申請を検討している場合は、社労士への相談を強くおすすめします。
申請でよくある不支給事例と失敗ポイント

人材育成助成金の申請では、手続きの順序ミス・書類不備・期限超過によって不支給になるケースが多く見られます。代表的な失敗パターンを事前に把握しておきましょう。
①訓練開始前に計画書を提出していない
最も多い失敗は「訓練を始めてから計画書を出せばよい」という誤解によるものです。計画書は訓練開始の原則1ヶ月前(21日前)までに提出し、受理通知を受けてから訓練を開始することが必須要件です。
「良い研修が見つかったので急いで申し込んだが、計画書を出す前に訓練が始まってしまった」というケースは不支給の典型例です。研修の実施を決めたら、まず労働局への計画書提出を最優先にしてください。
②訓練時間・カリキュラムが要件を満たしていない
コースごとに定められた最低訓練時間(例:Off-JTは20時間以上)や、カリキュラムの内容に関する要件があります。短時間のセミナーや要件外の内容では助成対象外となります。
また外部研修の場合、厚生労働省が定める「特定訓練」「一般訓練」の要件を満たすかどうかを事前に確認することが重要です。申請前に計画書の内容が要件を満たしているかを労働局の窓口でチェックしてもらうことをおすすめします。
③必要書類(出席記録・賃金台帳)の不備・保管漏れ
訓練中に出席簿・実施記録・外部研修の証明書などを適切に整備していないと、支給申請時に証拠書類として認められず不支給になります。
特に「受講者が訓練に参加した事実の証明(出席記録)」と「訓練中に通常の賃金が支払われた事実の証明(賃金台帳)」は必須書類です。訓練開始前に書類管理のルールを決め、漏れなく収集できる体制を整えておきましょう。
④支給申請の期限(訓練終了後2ヶ月以内)を過ぎた
訓練終了後2ヶ月以内という支給申請の期限を過ぎると、その時点で不支給が確定します。期限の延長は原則認められません。
「書類収集に手間取って期限が過ぎてしまった」「担当者が変わって申請を失念した」というケースが多く見られます。訓練終了日から逆算してスケジュールを組み、申請期限の1ヶ月前には書類を揃えることを目標にしましょう。
⑤労働保険料の滞納・未払いがある状態で申請した
助成金の受給には、雇用保険・労災保険(労働保険)の加入と、保険料の適切な納付が前提条件です。保険料の滞納・未払いがある事業主は助成金を受け取れません。
また法令違反(労働基準法・最低賃金法違反など)がある状態での申請も不支給・取消しの対象です。申請前に自社の労務管理・保険料納付状況を確認し、問題があれば先に解消してから申請することが重要です。
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まとめ
人材育成に使える主な助成金は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」(人材育成支援コース・教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コース)です。
中小企業の助成率は一般的に大企業より高く設定されており、研修費用や賃金の一部を補助してもらえます。申請は「計画書提出→訓練実施→支給申請」の3ステップで進みますが、訓練開始前の計画書提出が最も見落とされやすい要件です。
不支給を防ぐには申請手順と書類管理を徹底し、必要に応じて社会保険労務士に相談しましょう。助成金の受給には振込先の法人口座が必要です。GMOあおぞらネット銀行の法人口座は書類2点・オンライン完結で開設でき、受給後の資金管理にも最適です。





